黄金の「善意」が支配する昼と極彩色の「個性」を消費する夜。自由という名の洗脳が完成した都市リヴェルタスで、監視網が暴く「自由違反者」の烙印と、公開裁判という名の娯楽に抗い、真実の自由を追い求める記者カイトが見た魂の黙示録。

巨大都市リヴェルタス。そこは、世界で最も「自由」が溢れる場所とされている。
昼間の第一街区は、黄金色の光に満ちている。街の広場には「自由とは、誰にも縛られずに他者を想う力である」という高潔な旗が掲げられ、市民たちはホログラムで提示される「コミュニティ・プロジェクト」のリストを熱心に操作している。記者のカイトは、その光景を冷ややかな目で見つめていた。人々が競うように行う「善行」は、すべて脳内チップを介してスコア化され、生活ランクに直結している。ここでは「利他」さえも、システムに強制された生存戦略に過ぎない。
太陽が沈むと、街は「夜の顔」へと変貌する。 「Be Yourself(自分らしくあれ)」という極彩色のネオンが輝き、人々は昼間の禁欲を投げ捨てて「個性」を消費し始める。システムが用意した反逆的なファッションや、トレンドのジャンクフード。人々は自らの意志で選んでいると信じているが、その選択肢さえもAIが算出した「健全な欲求の発散」という名の管理プログラムの一部だった。
カイトは、この二重構造の裏側にある「真実の不自由」を追っていた。 彼が潜入した管理局のモニターには、システムに従わない者たちが「FREEDOM VIOLATIONS(自由違反)」としてリストアップされ、ドローンによって執拗に追跡されている現実が映し出されていた。「干渉のない自由」を謳いながら、システムは市民の思考の最後の一片までを透明にしようとしているのだ。
そして、このシステムの最も残酷な機能は、広場の巨大スクリーンで行われる公開裁判にある。 「JUSTICE OR ENTERTAINMENT?(正義か、娯楽か?)」という文字が躍る中、檻に入れられた「自由違反者」が群衆の前に晒される。市民たちは自らのデバイスを掲げ、処罰を求める叫び声を上げる。彼らにとって、他者の転落を「正義」として消費することこそが、システムから与えられた最大の快楽であり、自由の行使だった。
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カイトは、街の最深部で古い手記「ベルン・マニフェスト」を手に入れた。 そこには、掠れた文字でこう記されていた。 「お前たちはまだ、自由の意味を誤解している」
黄金の光もネオンの輝きも、人々から「思考の苦痛」を奪うための麻酔でしかない。カイトはペンを握り、あえて「自由違反者」としてリストに載る覚悟を決めた。真の自由とは、提示された楽園を拒絶し、孤独な闇の中に自らの道を見出すことだと確信したからだ。




























