霧のむこうのふしぎな町新装版。名作アニメの原点となったファンタジーの傑作。少女リナが迷い込んだ霧の谷の風変わりな住人たちとの物語。自立と成長を描いた感動の冒険譚が、美しい新装版で色鮮やかに甦る必読の一冊。

夏休みの始まりとともに、主人公のリナが辿り着いたのは、地図には載っていない「霧の谷」の町でした。そこは、一度入ったら、働かざる者は去らなければならないという、厳格でいてどこか温かい掟に守られた場所。この物語の扉を開くとき、読者はリナと同じように、得体の知れない不安と、それを遥かに凌駕する未知の世界への好奇心に包まれます。風変わりな下宿屋のピコットばあさんをはじめ、一癖も二癖もある住人たちとの交流は、単なる夢物語ではなく、ひとりの少女が「自分の居場所」を見つけ、自立していくための、尊い魂の試練でもあります。

この作品の真髄は、ファンタジーという形式を借りながら、働くことの誇りや、他者と心を通わせることの難しさと喜びを、瑞々しい感性で描き出している点にあります。霧が晴れた瞬間に現れる、色とりどりの屋根や石畳の道。ページをめくるたびに、五感を刺激するような鮮やかな描写が、読者の脳裏に自分だけの「ふしぎな町」を構築していきます。柏葉幸子先生の紡ぐ言葉は、優しくありながらも、時として現実社会の本質を突くような鋭さを秘めており、大人が読んでも、かつて持っていたはずの「心の羅針盤」を再確認させてくれるような奥深さがあります。

私自身、この新装版を手に取ったとき、幼い頃に感じたあの胸の高鳴りが、より洗練された形で甦るのを覚えました。リナが不器用ながらも一生懸命に働き、住人たちの信頼を勝ち得ていく姿は、今の時代を生きる私たちに、自分の足で立つことの美しさを静かに語りかけてくれます。新装版ならではの美しい装丁や挿絵は、物語の世界観をより深め、所有する喜びさえも与えてくれます。読み終えた後には、いつもの見慣れた景色さえも、霧のむこうに繋がっているのではないかという、密やかな期待感で心が満たされるはずです。

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講談社
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日常のすぐ隣に潜む非日常。それを信じる心を持ち続けることが、人生をどれほど豊かにしてくれるか。本書は、忘れかけていた大切な「魔法」を思い出させてくれます。

これは、これから冒険に出ようとするすべての子どもたちはもちろん、日々の生活の中で少しだけ魔法を必要としているすべての大人に贈られた、永遠のファンタジーです。最後の一ページを閉じたとき、あなたの心には、霧の谷を吹き抜ける爽やかな風と、新しい自分に出会えた充足感が宿っていることでしょう。時代を超えて語り継がれるべき伝説の町へ、今すぐその足で迷い込んでみませんか。