中世美術の深淵に触れる新版幻想の中世。ゴシック様式に潜む古代の記憶と異国趣味を解き明かす平凡社ライブラリーの傑作。ユルギス・バルトルシャイティスの独創的な視点が、歴史の闇に隠れた驚異の図像学を鮮やかに描き出す。

時を遡り、薄暗い聖堂の奥深くへと足を踏み入れたとき、柱頭に刻まれた奇怪な怪物や、壁面に躍る異形の文様に目を奪われたことはないでしょうか。本書「新版 幻想の中世」は、そんな私たちの好奇心を捉えて離さない中世ゴシック美術の裏側に、実は眩いばかりの古代の記憶と、遠い東方からもたらされた異国趣味が息づいていることを鮮やかに証明してみせる、知の迷宮への招待状です。

歴史の裂け目に咲いた、驚異の華
著者ユルギス・バルトルシャイティスが提示する世界は、私たちが教科書で習う整然とした歴史観を根底から揺さぶります。中世は単なる暗黒時代ではなく、かつてのギリシャ・ローマの神々が姿を変えて生き延び、あるいはシルクロードを渡ってきた怪物たちがキリスト教美術と密かに融合した、極めて豊潤で混沌とした時代であったことが説き明かされます。実際に読み進めるうちに、石に刻まれた怪異たちが、実は遠い文明の記憶を宿したメッセンジャーであったことに気づかされ、知的な興奮とともに背筋が震えるような感動を覚えるはずです。

緻密な分析が呼び覚ます、視覚の冒険
本書の素晴らしさは、膨大な図版とともに展開される、探偵小説のような緻密な推理にあります。ひとつの図像が国境や時代を超えてどのように変容し、ゴシックという枠組みの中で新たな意味を獲得していったのか。そのプロセスを追う体験は、単なる知識の習得を超え、世界の見方そのものを変えてしまう力を持っています。実際に掲載された図版を凝視していると、何世紀も前の職人たちが抱いた「未知なるもの」への畏怖や憧れが、紙面を通じて現代の私たちの心に直接語りかけてくるような錯覚に陥ります。

想像力の深淵を照らす、不朽の名著
平凡社ライブラリーとして新しく届けられたこの一冊は、美術史家のみならず、物語を愛するすべての表現者にとっての聖典と言えるでしょう。美しさと醜さ、聖なるものと俗なるもの。それらが渾然一体となった中世の「幻想」を読み解くことは、私たち人間が持つ想像力の根源を探る旅でもあります。実際に読み終えたとき、あなたは街で見かける古い建築や、ふとした模様の中に、かつての古代世界や異国の影を見出し、世界が以前よりも何倍も重層的で魅力的なものに感じられるようになっているでしょう。

知性と情熱が交錯する、この比類なき学問の冒険。あなたの本棚にこの一冊を迎え、何世紀にもわたって沈黙を守り続けてきた石像たちが語り始める、壮大な物語に耳を澄ませてみませんか。中世という深い霧の向こう側に広がる、目も眩むような幻想の地平が、今あなたの目の前に開かれます。