【都市計画の視点でパリを深く知る】『美観都市パリ』で広場・建築の裏側を読み解く!エッフェル塔の「嫌われ者時代」から、オスマン大改造、歴代大統領の美観整備まで、18の景観に秘められた歴史と美学。

🇫🇷もう観光客じゃない!『美観都市パリ』で街の「意味」を知る旅へ
パリ。世界で最も美しい都市の一つとして、その洗練された街並みは私たちを魅了し続けています。しかし、なぜパリの景観はこれほどまでに統一され、人々を惹きつけるのでしょうか?
『美観都市パリ: 18の景観を読み解く』は、長年にわたりフランスの都市計画を研究してきた和田幸信氏が、私たちが目にする18の象徴的な景観の背後にある歴史、思想、そして都市計画家の意図を鮮やかに解き明かす一冊です。この本を読めば、あなたのパリを見る目は一変するでしょう。
憧れの景観が持つ「異端」の歴史
本書の最も面白い点は、誰もが知るランドマークが、必ずしも最初から称賛されていたわけではないという「歴史の裏側」を教えてくれることです。
例えば、パリのシンボルであるエッフェル塔は、完成当初、文化人たちから「醜悪」と酷評されていました。また、モンマルトルの丘にそびえるサクレ・クール寺院も、その評判は未だに賛否両論。著者はこれらの「異端」な存在が、どのようにしてパリの景観の中に組み込まれ、その「美学」を生み出したのかを深く分析しています。
私自身の感想ですが、この本を読むまで、エッフェル塔やサクレ・クールをただ美しいものとして見ていました。しかし、その誕生の経緯や、反対側の景観との「ライバル関係」を知ることで、これらの建築物に対する見方が一気に立体的になり、知的興奮を覚えました。
「点」ではなく「線」で繋がる都市の構造
本書は、個別の建築だけでなく、ヴォージュ広場、コンコルド広場、ポン・ヌフといった広場や橋、そしてブールヴァール(並木道)など、パリの都市構造を決定づけた景観を選び、その成り立ちを解説します。
特に興味深いのは、アンリ4世によるヴォージュ広場の統一されたファサードから、オスマンの大改造によって誕生した開放的な空間への変遷です。単なる観光地の解説ではなく、ファサードの統一や、都市を取り囲んでいた城壁がブールヴァールという大通りに変わっていった過程が、「なぜパリはパリらしいのか」という疑問に明快な答えを与えてくれます。これは、まるで壮大な歴史ドキュメンタリーを読んでいるような感覚です。
また、現代の歴代大統領が進めてきた「大統領の美観整備」のプロジェクトが、かつての王や皇帝の都市改造の夢を受け継いでいるという指摘は、フランスの「王権の伝統」が現代の都市計画にも色濃く残っていることを示しており、非常に示唆に富んでいます。
この本は、パリの街をただ歩くだけでなく、「都市計画というフィルター」を通して街の言葉を聞き、その美しさの深遠な意味を理解したいと願う、すべての建築・都市・歴史愛好家に捧げる一冊です。






























